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2023年2月

2023年2月16日 (木)

2022年の台風第15号が残した課題“県と市町村の連携”

                                   2023.1月 日本災害情報学会News Letter No.92 p.2に掲載-

 

 昨年、静岡県内を襲った台風第15号の対応をめぐり、自衛隊災害派遣要請の遅れを問われた静岡県知事は、「市町から(要請が)あがってこなかった。じりじり待っていたので今日(2日後)になった」、一方の静岡市長は、知事と相談するにも「携帯番号を教えてもらっていない」、対して知事は「番号を教え合う文化は私にはない」と答えるなど、自治体トップ双方の意思疎通のなさを象徴するやり取りが全国に報道され、あきれるばかりであった。

 

 9月23日の夕刻から24日明け方にかけて、台風第15号の影響により静岡県内では猛烈な雨が降り、記録的短時間大雨情報が16回発表された。当初は、静岡市内の広域停電や浸水、断水に目が向き、中山間地域で起きていた家屋への土石流入や河川閉塞などの状況把握が遅れた。翌朝は台風一過の晴天で、本来であれば航空偵察で状況把握も行えた。残念ながら、台風の勢力はあまり発達しないとの前日の予報もあり、十分な準備がなく、周辺一帯が浸水したヘリコプター基地に要員がすぐに参集できなかったことも問題になった。

 

 災害時こそ、都道府県と市町村の緊密な連携は不可欠である。例えば、被害が予見されれば、初動段階で都道府県からリエゾンを市町村に派遣しプッシュ型の支援を行う。自衛隊の支援を受けてでもヘリで航空偵察を行い、被害全容の把握や孤立地域への救援も可能である。

 

 東海地震など大規模災害に備え、様々準備していた静岡県であったが、今回その運用に至らなかった事がいくつかある。例えば、県内の370余の孤立予想集落には、防災無線や衛星携帯電話を配備し、陸路途絶に備えヘリの離着陸又はホイスト・スペースが確保されていた。にも拘わらず、孤立地域の状況把握に23日を要している。何が不足情報なのか、自ら発信しないと情報は集まらない。県から市町村本部にリエゾン派遣の体制もあったが、被害を甘く見たのか直後には実施されなかった。いずれも、準備してきたはずであるが、実態に合わせ常日頃からメンテナンスされていなかったことも一因である。

 

 災害対応に完全はないことを肝に銘じ、災害時には何事にも積極的に前のめりに対応を進めることが鉄則であることを改めて感じさせられた。

自治体、企業の事業継続計画 平時こそ見直しの好機

                                                                                                          -2023/2/15 静岡新聞「時評」掲載-

 

 災害などの緊急事態が発生した時に、被害を最小限に抑え、早期復旧や事業継続を図る計画を事業継続計画(BCP)と呼んでいる。2007年の新潟県中越沖地震で、自動車の重要部品の国内シェア50%を占めるメーカーが被災し、国内の自動車生産は一時全面中止した。その教訓から、企業のBCP作成が本格的に始まった。

 

 政府も首都直下地震対策の一環として政府のBCPの作成を進め、自治体にも普及を図ってきた。22年版の防災白書によると、BCP作成率は都道府県100%、市町村97%、大企業では70.8%、中堅企業は40.2%と、十分ではないもののようやく進み始めた。

 

 富士山の火山ハザードマップ改定や近年多発する大規模水害を機に、BCP見直しの相談を時々受ける。対応の基本は同じであるが、備える装備やサプライチェーンが多層化すること、ハザード(危険)に応じ業務回復の目標を変えて見直すことが求められる。

 

 こうした中、自治体や企業の災害対応力について気に掛かる事がある。体制は「できていたはず」だとか、対応は「できるはず」であったが実際の災害場面で「機能しなかった」「忘れられていた」といった話を災害後の検証でよく聞く。なぜそうなるのか。

 

 計画を作って何年も放置したまま、いざ対応しようとしたら状況が変わっていた-というケースもあり得る。作成当時の担当者は関係者と調整し、細部まで目を配って計画を作り上げる。その時に災害が起きれば的確に対応できても、引き継ぎを繰り返すうちに計画していた対応場所や機能、担当者、連絡方法なども変わり、時を経て計画そのものが陳腐化することがある。

 

 BCPの作成率が上がってきた一方で、めったに運用されない計画にはこうした盲点が潜む。通り一遍の防災訓練で全て検証することは困難だ。むしろ商業施設や製造業などで定期的に行われる「棚卸し」のように、計画をいったん白紙に戻し、再構築するほうが早いこともある。これまでのノウハウを切り捨てるのではなく、蓄積したノウハウを活用することが重要である。

 

 日々の多忙な業務の中で、原点に振り返って組み立て直すことは勇気のいる作業である。しかし、大災害に遭遇して「あの時、見直しておけば良かった」と悔やむことがないよう、何事もない平時こそ体制を見直すチャンスである。

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