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2023年6月 7日 (水)

非常口確保の大切さ 日常文化として徹底を

                                               -2023/6/6 静岡新聞「時評」掲載-

 

 100年前に起きた関東大震災の最大の教訓は都市防火と避難である。当時に比べ建物の防火対策は格段に進歩した。その傍らで、いくら口を酸っぱくして消防が指導しても、非常口の裏に物が積み上げられている光景を目にする。いざ火災発生という時に大きな障害になることは目に見えている。

 

 先日、ロンドンの大英博物館を見学する機会があった。展示面積57000平方メートル。世界中からの収蔵品が所狭しと並べられ、多くの見学者でごった返していた。館内のレストランで休憩していた時、火災警報器の耳障りなサイレン音とともに「避難するように」との館内放送が流れてきた。さて、どうするのか。廊下の角ごとに黄色のベスト姿の職員が立ち、落ち着いた声で誘導し、子どもを含む多くの来館者が慌てることなく館外に移動を始めた。

 

 感心したのは、要所要所に「火災の非常口」の誘導マークが大きく表示され、非常用のドアや通路には「KEEP CLEAR(キープ・クリアー)」の表示があり、障害物は何も置かれていない。避難した広場を見回しただけでも1000人を超える来館者が、数分で見事に避難したことは新鮮な驚きであった。結果的には警報機の誤作動であったが。

 

 街中を歩くと、ホテルやレストラン、商店など公共空間には、普段の出入り口とは別に非常口が複数設けられ、通路に物一つ置かれていない。さらに、こうした公共施設では毎月定期的に訓練や避難ルートの確認が行われているとのこと。消火器や消火栓は通路の目立つ所に堂々と設置され、非常口の表示は誰の目にも付くよう大きい。これほど徹底した街を私はこれまでに経験したことがない。

 

 その背景には、357年前、1666年のロンドン大火の教訓が今でも強く影響していると聞いた。当時の家屋はほとんどが木造で街路も狭く、家屋の85%が焼失した。これをきっかけに木造建築の禁止など建築規制が行われ、併せて防火対策が今でも強く意識されている。2017年にロンドン市内で起きた高層住宅火災も、直近の教訓として影響しているかもしれない。

日本もロンドン同様にさまざまな防火対策が進められている。中でも、緊急時の非常口の安全確保は防火管理者だけでなく、その建物を利用する全員の責務でもある。こうした安全対策を何げない日常として徹底できる文化が必要だと強く考えさせられた。

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